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東京家庭裁判所 昭和58年(家イ)557号 審判

申立人 甲野花子

昭和二一年一月二日生

相手方 A

一九四九年四月二〇日生

主文

申立人と相手方は離婚する。

理由

申立人は主文同旨の調停を求め、その実情として次のとおり述べた。

(1)  相手方は、西マレーシア出身でマレーシア国籍を有し、強いて信仰する宗教と問われれば佛教徒といえる者で、昭和四四年以来日本に滞在している者であるが、申立人は、同五〇年四月頃から相手方と日本国内で同棲生活を始め、日本式の結婚式を挙げて同五〇年六月二八日大田区役所に婚姻届をした。しかし、性格の不一致からか、間もなく相手方から離婚することを求められるようになり、両者の紛争が激化して昭和五三年七月末頃からは、別居して夫婦関係もなくなり、以来一年に一度位相手方から申立人に対して離婚の申し出があって、申立人も昭和五六年末に至り、止むなく相手方のその申し出を了解することになった。

(2)  よって以上の事情から申立てのとおりの調停を求める。

2 判断するに、本調停手続において、当事者間に申立てのとおりの合意が存在し、一件記録によると、その原因については申立人の上記申述のとおりの事実が認められるが、以上の事実によると、夫である相手方は、マレーシア国籍の西マレーシアに属する者であるから、本件の準拠法は、法例第一六条第二七条第三項にしたがい、イスラム教徒以外の者に適用される西マレーシア民事離婚法となるところ、同法による離婚は裁判による離婚のみで、合意又は調停による離婚制度は認められていない。したがって上記調停手続による離婚の合意の存在をもって調停離婚の成立とすることはできないが、同離婚法第六条には、婚姻後三年以上を経過し、しかも三年以上相手方が申立人を遺棄したときは、裁判により離婚を認める旨定められているので、前記事実によると、本件はこの離婚原因に該当する事由にもとづく離婚の申立てであることも明白である。

よって本件は、調停は成立しないが、当事者双方の申立ての趣旨に反しない限度で事件の解決のため審判により離婚を認容するのが相当な場合であること明らかであるので、法廷地手続法である家事審判法第二四条にしたがい、本件関与の家事調停委員沢木敬郎同清水玄子の意見を聴き、主文のとおり審判する。

(家事審判官 藤枝忠了)

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